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プロフィールで触れた通り、私もかつて、トラウマが引き起こす様々な問題に悩んでいた一人でした。ここから先は個人的な話ですので、ご興味のある方だけお読みください。

私は宗教の影響を強く受けた機能不全家庭で育ち、物心ついた頃からどんよりと重たい雲がかかったような閉塞感の中で生きてきました。
常にどこかしら体の調子が悪く、すぐに疲れて寝込んでしまうので、人の多い場所に行けませんでした。

でも、どうして苦しいのか分かりませんでした。部屋はぐちゃぐちゃで、やらなきゃ!と思うことはいくつも浮かんでくるのに、何も手につきません。床に落ちているゴミを拾わなきゃ、電気を消さなきゃと思っても、ただ「やらなきゃ」と思っているだけで、椅子の上から動けずに数時間が経ってしまうことはしょっちゅうでした。どうしてこんな簡単なことができないの?と言われても、「わかりません、ごめんなさい」というしかありません。
どこかに異常があるのなら原因が知りたいと思いましたが、病院で検査をしても異常なしと言われます。じゃあ、私が何かおかしいのだろう、頑張れない私は怠け者で、甘えているだめなやつなのだろうと、他の人が当たり前にこなせていることすらできない自分を責めていました。

そんな毎日でしたから、困難だらけでした。物心ついた頃から不眠症で、日常生活は上手く行かず、様々な身体症状が出てきて、不登校・ひきこもりになり、そのうち摂食障害や自傷行為が始まり、鬱、アルコール乱用、薬への依存、自殺未遂、精神科入院……等々、様々な症状や問題を片っ端から経験しました。他にも、恋愛に依存してボロボロになったり、カフェインを取りすぎたことがきっかけで幻覚が見え始めて10年以上治らなかったりと、結構酷い状態だったと思います。うつ病だと言われたこともありましたし、統合失調症だと言われて薬漬けのような生活だったこともありました。
今思えば、ネグレクトや虐待のトラウマによって感覚過敏や発達障害のような症状が生じていたところから様々な問題が派生していったのですが、当時は何も分かりません。自分はだめなやつだから、罰されるのは仕方ないとさえ思っていました。寝ても覚めてもただ息をしているだけで苦痛で、どうすればこの不安や苦しみから逃れられるんだろう?と考えながら、長い間彷徨っていたような気がします。

ですが、今はそういった悩みから解放されています。何か対処しなくてはいけないことが出てきてもパニックにはならず、心に波が立っても穏やかです。楽しいなあと感じてすごす時間が長くなって、以前のように、何もしていないのにわけもなく苦しいだとか、ただ生きているだけで精一杯で余裕がなかった時とは全く違う感覚です。
まるで「普通の人」みたいだと、かつて普通のことすらできなかった私が思っているのが不思議です。

私が回復したきっかけが、心理療法との出会いでした。

なんとか社会復帰はしたものの、騙し騙し生きながら、やっぱりそれまでと同じように無理をしてはダウンするというパターンを繰り返していたある朝のことです。とうとう、起き上がれなくなってしまいました。気力も体力も枯渇したような感覚で、栄養ドリンクを飲んでも動けず、諦めてしばらく寝て休んでも、起き上がったそばからまた座り込んでしまう。過去にも精神状態が悪化して入院したことはありましたが、その時とはまた異なる限界を感じました。
それまでの生き方では上手く行かないと感じ、幼少期から引っかかっていた「何らかの心の問題」を解消する必要があるのかもしれないと感じたのはその時です。ずっとぼんやりと感じてきたことではありましたが、それほど強い影響を及ぼすものだと、当時の私は知りませんでした。何度も失敗を繰り返し、死にかけて、強制的に「心」に向き合わされたともいえるかもしれません。私の心は結構スパルタなようです。

そして、心と身体について学ぶ過程でFAP療法(Free from anxiety program)という心理療法に出会い、トラウマの治療を受けたことで、それまでのことが嘘だったかのように回復していったのです。

それまで他にも色々な治療法を受けてきましたが、私にとっての大きな転機はトラウマ治療でした(他にも私の回復に役立ったと思うものはあるので、それらはいずれブログなどでご紹介したいと思います)。
例えば普通のカウンセリングは、それまでにも受けたことは何度かあったのですが、私にとっては気休めで終わってしまっていました。
誤解のないように言うと、一般的なカウンセリングも素晴らしいものなのです。実際に私も、回復してからは時々一般的なカウンセリングを利用して、とても助けられています。世の中には従来のカウンセリングで重症のクライアントさんを診ていらっしゃる凄腕のカウンセラーもいらっしゃいますので、カウンセラーの技量や、相性によるところも大きいのだと思います。

ですが、当時の私の状況は、例えるならば、虫歯が悪化して歯根の先が膿んでいるのに、歯科ではなく美容外科に「顔のバランスを治してほしい」と頼んでいるようなものでした。本当は歯の痛みで顔が歪んでいたのに。つまり、相談先が見当違いだったのです(最近では「精神科医やカウンセラーからトラウマの可能性があると言われて来ました」と仰る方も少なくないので、当時とは変わってきていると感じます)。

一般的なカウンセリングで話を聞いて貰って少しは楽になる部分はあり、明日はカウンセリングだからあと1日だけ生きてみよう……と死ぬことを先延ばしにする理由になることはありましたが、心の奥深くにある根本的な苦しみは消えたことがありませんでした。結局手の打ちようはなくこれを抱えて生きていくしかないのだと感じ、カウンセリングで楽になるどころか余計に絶望することもあったのです。

ですが、心理療法(FAP療法)を受けてしばらくすると、小さな頃から自分の一部だと思いこんでいた胸の苦しさや空虚感が消えて、長年続いていた肩こり・緊張・アレルギーなど、数々の身体症状までもが改善されていることに気づきました。それまでとは違う、手応えのようなものを感じたのです。
また、私が自分のトラウマだと思っていたのはトラウマのごく一部でしかなく、自覚していなかった別の所に問題が潜んでいたことも知りました。
治療を重ねて記憶と感情の統合が進むと、「やらなきゃと思っているのにできない」という問題も改善し、いつのまにか、やろうと思うのとほとんど同時に動けるようになっていました。

それまで、できないのはみんなより意志が弱いからだとか、努力が足りないからだと思っていました。
では、行動に移せるようになった私は、前より意志が強くなって、努力できるように変わったのか?というと、違うのです。

強い意志を持って行動できるようになった訳ではなく、努力もしていません。ただ考えずに動いて、必要なところに必要なだけエネルギーを使うような感覚です。前よりも、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃと次々に考えが浮かんでくること自体も減ったと思います。1000個の「やらなきゃ」が溢れている中から一つを選んで実行するプロセスよりも、2~3個の「やらなきゃ」しか浮かんでいない時に一つずつ片づける方がずっと脳のリソースが少なくて済むので、楽です。昔、何もできないと自分を責めていた頃の方が、なんとかしようと考えて努力して、状況を打破しようと戦っていたと思います。ですが、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような、頑張ってもそれが行動に反映されずにただただ消耗していくような重たい疲労感がありました。それが無くなったのです。
他の人たちはこんな楽な世界で生きていたんだ!と、あまりの違いに驚きました。

世界が変わったかのような体験をして、この時はまるで奇跡のようだと思いましたが、これは決して特別なことではないのです。
トラウマやストレスは、人の脳にも影響を及ぼします。例えば、特定の脳の部位が委縮して機能低下を引き起こしたり、逆に肥大して感覚過敏になり、脳に過度の負荷がかかるようになったりもします。あなたがだめな訳でも、頑張りが足りない訳でもなく、ちゃんと理由があるのです。
そして、傷ついた人にも傷ついた脳にも、回復する力が備わっているのです。

一人でも多くの方が苦しみから解放され、本来の自分らしく、楽に呼吸をして、自由に生きられるようなお手伝いがしたいという思いに突き動かされて心理カウンセラーを志し、現在に至ります。これまでに、様々な悩みを持つ方々に関わらせていただき、多くの方たちが苦しみから抜け出し、自分自身の人生を取り戻すのを拝見してきました。「今まで気づいていなかったけれど、こんなに体が重かったんだ。他の人ってこんなに楽なんだ!」と治療を受けたクライアントさんたちが驚きの声をあげられるのを聞くのが、今の私の喜びです。素晴らしい回復の物語に、人が持つ無限の可能性を教えていただく日々です。

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